支援企業・団体の声
株式会社ベリサーブ
2026.7.30
ソフトウェアの品質保証のプロ集団が、パラアスリートとともに描く支え合いの形
ソフトウェアの品質保証を専門とする株式会社ベリサーブが、パラアスリートの雇用を開始したのは2017年のことです。現在は12人のパラアスリートの競技活動を全面的にバックアップしながら、社内の多様性推進や社員交流の場づくりにも積極的に取り組んでいます。そうした現場を深く知る広報部 パラアスリート課課長の倉茂麻理子(くらしげ まりこ)さんと、同社所属アスリートの一宮剛(いちみや つよし)選手(車いすテニス・ボッチャ)に話を聞きました。
会社としての一体感を作りたい
卓球、車いすラグビー、スノーボード、そしてボッチャ——。今や幅広い競技のパラアスリートを雇用するベリサーブはなぜ、この世界に関わるようになったのでしょうか。
同社は事業の特性上、顧客先に常駐してソフトウェアの品質保証を行う業務が多いため、オフィスなどで社員が一堂に集まる機会はどうしても限られてしまいます。以前から「会社としての一体感をどう作るか」「社員が一丸となって盛り上がれることは何か」といった課題感があった中で、スポーツが持つ力に着目したといいます。
そして、国内でパラスポーツへの機運が高まりつつあった2017年、同社はパラアスリートの雇用をスタート。徐々に人数は増えていき、今では12人の選手が在籍しています。
同社がパラアスリートに求めるのは、大きく2つのことです。一つは自分で練習メニューや大会出場スケジュールを組み立てられる自律性、そしてもう一つは、トップレベルを目指す意欲です。「国内外の大きな舞台で活躍することを目標にしてほしいというのは、採用にあたって大切にしている点です」と、倉茂さんは話します。

また、パラアスリートの大半はオンラインで勤務報告や連絡を行うため、コミュニケーション能力も重視されています。月に2回の業務報告書の提出に加え、自社SNSで発信するための写真依頼やスケジュール確認など、週1回以上はやり取りが発生します。そのため、お互いにスムーズにやり取りができるようにコミュニケーションでの相違がないように心がけています。
他方、会社からの支援内容については、パラアスリート自身が出場したい大会に自由に参加できる環境を整えることを基本としており、海外遠征費の援助なども行っています。また、各競技の連盟や協会と連携しながら大会の位置付けを確認し、競技ごとにパラアスリートの評価方法を工夫している点も特徴でしょう。これは以前、選手たちから「評価が実態に合っていない」という意見があったことに起因します。例えば、同じ国際大会でも競技人口や競技レベルに違いがあるため、それらを踏まえてできるだけ平等な評価基準になるよう見直しを図ったということです。
自ら扉を叩いた一宮選手
ベリサーブがパラアスリート雇用を始めた当初から所属する一宮剛選手は、車いすテニスを30年以上も続けてきたベテランです。
先天性の脳性まひのある一宮選手は、他のプレーヤーからの勧めで1992年に車いすテニスの競技人生をスタート。かつて勤めていた会社では一般社員として働きながら、有給休暇や振替休日を使って試合に参加していましたが、「もう少し競技に集中できる環境がほしいと思っていました」と一宮選手は当時を振り返ります。
インターネットでパラアスリートを採用している企業を調べ、複数の会社に問い合わせた中でいち早く返答があったのがベリサーブだったといいます。面接などで実際に話を聞くと社員の人柄に魅力を感じ、入社を決意しました。「こんなにいい人たちが集まっている会社は初めてでした」と一宮選手は笑顔で語ります。日ごろのオンラインでのやり取りも円滑で、違和感やストレスもないそうです。

同社パラアスリート課の取り組みは、近年では社外への発信活動にも広がっています。これまでには、一宮選手も年に数回、小学校や中学校を訪れ、自身の生い立ちや障がいについて講演し、その後に車いすテニスの体験会を行ってきました。
「もともと教員だったこともあって、子どもたちに教えることは自分に向いていると思います」と一宮選手。現在も月に1回、関東車いすテニス協会主催の子ども向けテニス教室に参加し、テニスの指導や保護者との対話の機会を設けています。
倉茂さんは「(一宮選手に限らず)パラアスリートの皆さん、子どもや社員と交流するのがとても上手なんです。例えば、体験会などでも競技の魅力や車いすの動かし方を自分から説明しに行くなど、積極的に関わってくれる姿が頼もしいですね」と目を細めます。
社員との交流に関しては、親会社であるSCSK株式会社所属のパラアスリートが同じ国際大会に出場することから、合同壮行会を開催したほか、大阪・名古屋近辺で勤務する社員が集まる会議において車いすやビームライフルの体験会を実施するなど、さまざまな場を創出しています。加えて、社内ポータルで参加者を募り、パラスポーツの観戦イベントも定期的に行っています。
「パラスポーツの観戦や応援が思ったより楽しかった」という声が広がり、毎回のように参加する常連の社員も増えてきました。倉茂さんは「ビームライフルを撃ってみたいという純粋な好奇心から来てくれた社員が、その後他のパラスポーツに興味を持つようになって応援に来てくれたというケースもあります」と手応えを語ります。
「フィジカルだけで戦うパラアスリートはすごい」
このように、パラアスリートとの関わりが深まるにつれ、社員の意識にも思わぬ変化が生まれています。全社向けのオンライン勉強会でイベント告知を行った際、ある社員がこんな言葉を口にしました。「日ごろ私たちはAIやPCなどのデジタルに頼りがちだけれど、パラアスリートのように、フィジカルだけで世界と戦っている人たちは本当にすごい」。倉茂さんはこのことがとても印象に残っているといいます。
何よりも倉茂さん自身が、仕事を通じてパラアスリートに大きな影響を受けたと自覚しています。
「車いすの方が坂道で苦労していても以前は『断られたらどうしよう、必要ないかもしれない』と戸惑っていましたが、今は自然に『押しましょうか?』と言えるようになりました。パラアスリートの方々と一緒に働くことで、障がいのある方との距離感だけではなく、彼らの活動的な行動に刺激を受け、自ら積極的に動くという力が身に付いた気がします」
倉茂さんは続けます。
「今まで自分が知らなかった世界を見ることで、大きな気付きを得られています。パラスポーツやパラアスリートは、実際に観たり応援したりする機会がなければ、どこか遠い存在に感じられるかもしれません。しかし実際に体験や交流をしてみると、多くの楽しさや驚きがあります。こうした新たな気付きや発見は他の社員にもあるようですね」
一方、一宮選手も選手との交流を行うイベント等はパラスポーツを広める大切な場。帰り道の電車でたまたまイベントでご一緒した参加者とボッチャのことや車いすのことを話したとき、こうやって知ってもらうことで世界が広がっていくんだと実感しました。」と力を込めます。
また、パラアスリートの存在は、社員同士の共通の話題にもなっています。たまたま出社したパラアスリートに社員が話しかける光景や、「この前の試合見ました!すごかったですよね」と社員同士の雑談が生まれる場面も見られるそうです。顧客先への常駐が多く、ともすれば分断されがちな組織にパラアスリートがハブとなり、緩やかなつながりをもたらしているといえるでしょう。
「当初の目的だった『会社の一体感をどう作るか』が、少しずつ形になってきていると感じています」と倉茂さんは話します。

イベント集客、体験会の場所探し……課題も散見
こうした取り組みを続ける中で、課題も浮き彫りに。「せっかくイベントを告知しても、どうしても一定の層にしか届かない。もう少し多くの社員に来てもらいたいというのが正直なところです」と倉茂さんは率直に打ち明けます。
その打開策として心がけているのは、一人一人への声かけや、口コミの積み重ねです。「特効薬はないと思っています。地道に発信を続け、巻き込みながら来てくれた人に楽しんでもらう工夫を凝らすしかない」と倉茂さんは意気込みます。わかりやすい観戦ガイドを自作して配布するなど、初めてパラスポーツを観る人が楽しめるような企画を今後も実施していく予定です。
また、体験会の場所探しについても苦労しているようです。TEAM BEYONDに対しては「一社だけではできないことを、複数の企業が連携することで実現できる環境づくりをサポートしてほしい。体育館の確保なども、企業同士で協力できる仕組みがあれば、活動の幅がさらに広がるはず」と倉茂さんは期待を寄せます。

競技は変わっても、目標は変わらず世界の舞台へ
一宮選手は2024年、長年親しんできた車いすテニスに加え、ボッチャへの参入を決意しました。背景には、身体機能の変化により車いすテニスのプレーが難しくなったという事情がありました。
「いくつかの競技とボッチャで迷ったのですが、お世話になっているテニスコーチの大学時代の恩師がボッチャに携わっていたご縁もあり、ボッチャを始めました」と一宮選手は経緯を説明します。
ボッチャは、カラーボールを投げて白い目標球(ジャックボール)にいかに正確に近づけるかを競う競技で、ミリ単位の精度が勝敗を左右します。「テニスに比べると、フィジカルより、メンタルの比重が大きい。練習では調子が良くても、試合になると途端にうまくいかなくなることはよくあります。それがボッチャの怖さであり、面白さでもあります」と一宮選手は語ります。一方で、長年のテニスで培った体幹の強さはボッチャでも大きな武器になっているといいます。
現在は3つのクラブを掛け持ちし、最大で週3回はトレーニングを積んでいます。当面の目標は国内のボッチャ日本選手権に出場し、日本代表入りすること。その先には世界の大舞台への出場という大きな夢があります。
なお、車いすテニスについても取り組んでおり、「アジアでただ一人の電動車いすプレーヤーとして、できる限り長く現役を続け、爪痕を残したい」と将来への意欲を語っています。
「会社に入ったとき、まさかこんなに長く一緒にやっていけるとは思っていませんでした」と一宮選手はほほ笑みます。倉茂さんもまた、「対等に付き合えている関係性がいいと思っています。変に気を遣うのではなく、何かあれば正直に話し合える。それがパラアスリート課のチームとしての強みだと感じています」と力を込めます。
2017年に3〜4人でスタートしたベリサーブのパラアスリート支援は、今や12人の選手を擁する本格的な取り組みへと発展しました。「パラスポーツの面白さと素晴らしさを、もっと多くの人に知ってもらいたい」——。倉茂さんと一宮選手の思いが一致していたことが、とても印象的でした。

株式会社ベリサーブ
| 住所 | 東京都千代田区神田三崎町3-1-16 神保町北東急ビル9階 |
|---|---|
| 担当部署 | 広報部 パラアスリート課 |
| URL | https://www.veriserve.co.jp/ |

