支援企業・団体の声
APRESIA Systems株式会社
2026.9.28

初めての社員応援試合で日本新記録を樹立
~パラパワーリフティング選手が社内にもたらした価値~

ネットワーク機器メーカーのAPRESIA Systems株式会社(以下、APRESIA Systems)は、2019年からパラアスリート採用に取り組んでいます。その一人として迎え入れたのが、パラパワーリフティング選手の成毛美和(なるけ みわ)さんです。

元々は車いすバスケットボール選手だった成毛さんは、引退後、子育てと家業の手伝いに追われていたところ、知人から声をかけられパラパワーリフティングの競技を始め、やがて日本代表として世界選手権などに出場するまでに成長しました。

APRESIA Systemsに入社して約7年、現在までにどのような歩みがあったのでしょうか。成毛さんと、HR本部総務部担当課長の木村行紀(きむら こうき)さんに、採用の背景からこれまでの取り組み、今後の展望までを伺いました。

障がい者の法定雇用率を契機に始まったパラアスリート採用

2016年12月、日立金属株式会社の情報システム事業部門が独立し、APRESIA Systemsとしての新たな事業がスタートしました。設立時点での障がい者雇用状況は芳しくなく、当時二百数十人の会社で障がい者法定雇用率を達成するために必要とされていた6人を採用するのは決して容易なことではなかったため、木村さんにとって、障がい者雇用の促進は2018年にAPRESIA Systemsへ入社した直後からの重要なミッションとなりました。

「企業の社会的責任という意味でも、避けて通れない課題でした」と木村さんは当時を振り返ります。下肢障がいのある社員を1人採用していたものの、もちろんそれだけでは足りません。さまざまな採用手法を調査する中で出会ったのが、パラアスリートの就労を専門に支援する人材紹介会社でした。

「当時『アスリート採用』という形態自体を知らなかった」と話す木村さんですが、説明を聞くうちに、自社にとって受け入れやすい仕組みだと分かってきたといいます。そして2019年3月、成毛さんと、デフゴルフ(入社当時の競技はデフフットサル)の中島梨栄(なかじま りえ)さんを新たに採用することになりました。

パラアスリート採用には、競技に専念してもらう「競技専念型」、仕事と競技を両立させる「社内勤務・競技併用型」、引退後のキャリアも考え、フルタイムで働きながら競技を続ける「競技支援型」など複数の選択肢があります。APRESIA Systems が選んだのは、最も自社に合っていた競技専念型でした。

その理由の一つに「オフィス環境」がありました。APRESIA Systemsはオフィスビルの一角に本社を構えていたため、建物の構造そのものを改修することができません。駐車場がない、誰でも使える多目的トイレがない、出入口の扉が広くないなど、バリアフリーへの課題が多い状況でした。

「毎日通勤してもらうのであれば、何らかの対応をしなければなりません。しかし、競技専念型であれば、来社する機会自体が限られるため、設備面についてはほとんど悩む必要がありませんでした」と木村さんは語ります。

木村さん

偶然の再会から始まったパラパワーリフティングへの挑戦へ

成毛さんがパラパワーリフティングの道に進んだのは、思いがけない再会がきっかけでした。当時、子育てと夫が営む喫茶店の手伝いに追われ、経済的にも厳しい状況にあった成毛さん。外で働くことも難しい中、病院で5〜6年ぶりに知人と偶然出会います。

それまでバスケットボールをしていた成毛さんに、その知人から「パラパワーリフティングをやらないか」と声をかけられたのです。ちょうど国内でパラスポーツへの関心が高まり、競技の普及が進み始めたころでした。「個人競技だからスポンサーがつく可能性もある」という言葉が、成毛さんにとってはとても魅力的に映ったといいます。

成毛さん

最初は夫の反対もありましたが、パラパワーリフティングを始めることを決意。しかし、いざ始めてみると遠征費や合宿費など競技を続けるための費用がバスケットボール以上にかかることが分かってきます。海外大会の出場でランキングを上げる必要がある中、子育てとの両立にも限界がありました。

そこで知ったのが、アスリート雇用という仕組みでした。当時はまだ無名の選手で、競技自体の知名度も高くなかったことから、「自分なんて採用してもらえるのだろうか」という不安もあったといいます。実際には他社の選考も並行して進んでいましたが、面談で木村さんたちが「アスリートとして心から応援したい」という思いを強く伝えてくれたことが、APRESIA Systems への入社を決める後押しになりました。

とはいえ、まったく異なる競技への転向は簡単なものではありませんでした。コンディションづくりも、階級制ゆえの体重管理も、バスケットボールとは大きく異なります。それでも、5年間の競技生活のブランクを経て、一からパラパワーリフティングに向き合えたことが、むしろプラスに働いたと成毛さんは話します。

トレーニング内容も、反復練習を重ねるバスケットボールと違い、筋力トレーニングが中心のパラパワーリフティングでは1日2時間程度のトレーニングと休養のサイクルが基本です。「好きで続けていたバスケットボールとは違い、『これは自分の仕事にしていかなければならない』という意識が最初からありました」と成毛さん。最初は義務感が強かったものの、このトレーニングと休養のサイクルが、子育てをしながら競技を続ける生活スタイルにうまく合致したといいます。

一方、会社としてどのようなアスリート支援をしているのでしょうか。APRESIA Systems では、競技活動費を給与に含めて支給するほか、会社名の入ったウェアやユニフォームを提供しています。

また、選手に対してだけでなく、社員たちに配る応援グッズの製作にも力を入れています。例えば、マフラータオルは会社のコーポレートカラーである水色が会場でひときわ目立つため、「応援にも宣伝にも防寒にもなる」一石三鳥のアイテムになったというエピソードも生まれました。

木村さん2

「会場に身内がいるという安心感」、社員の応援に感謝

応援に関して、大会情報を社内ポータルで案内する取り組みが続けられています。ただ、遠方で開催される大会も多く、休日開催であることも重なって、大勢の社員が観戦に駆けつけるのは簡単ではありません。そこで効果を上げているのが、個別に声をかける“一本釣り”的なアプローチだといいます。

「社内ポータルに観戦情報を載せるだけでは、なかなか効果が出ません。直接声をかけることで、参加してくれる人が徐々に増えてきました」と木村さんは力を込めます。一度足を運んだ社員が次第に自発的に観戦へ向かうようになったり、家族を連れてきてくれるようになったりと、応援の輪は少しずつ広がっているようです。

実際にパラパワーリフティングの試合を観戦した社員からは、「あんなに重いものを持ち上げられるのか」という驚きの声が上がるといいます。会場の入口付近で一般の観客向けにバーベルを実際に持ち上げてみる体験コーナーが設けられていることもあり、これを試した社員が、成毛さんが挙げている重量のすごさを実感するだけでなく、パラパワーリフティングという競技そのものへの理解を深める機会にもなっています。

試合後には、成毛さんと社員の交流も生まれます。「会場に身内がいるという安心感がある」と成毛さんが話すように、リラックスした気持ちになれるといいます。

「結果が良くなかった時は申し訳ない気持ちになりますが、それでも『お疲れさま』などと声をかけてもらえると、次へのモチベーションになります」

直近の大会では、5人の社員が応援に駆けつけ、タオルを振って声援を送ったといいます。まだ観客の少ないパラパワーリフティングにとって、これは決して小さな存在感ではありません。

成毛さんにとって特に印象深いのは、APRESIA Systems に入社して初めて出場した京都での大会です。会社名の入ったウェアを着て臨んだこの試合で、日本新記録を樹立して優勝したのです。応援に駆けつけた木村さんや、西日本支店の社員たちが喜んでくれたことが、選手としての自信と会社への帰属意識を同時に育てる出来事になりました。

「私はこの時に初めてパラパワーリフティングの競技を見たのですが、そこでいきなり日本新を出すなんて、成毛さんはとてつもなくすごい人だと感動して、他の社員と一緒に大いにはしゃいでしまいました」と木村さんは照れ笑いします。

「自分が結果を出すと、こんなに喜んでもらえるのか」と感じたこの経験は、成毛さんにとって会社との距離が一気に縮まった瞬間でもあったといいます。

応援風景

社外活動を通じて広がる会社の認知

応援による社員の一体感醸成以外にも、成毛さんの存在はAPRESIA Systemsに変化をもたらしています。その一つが、学校での体験会や講演活動です。

スポーツ庁が主管するアスリート全国学校派遣プロジェクト「アスリーチ」を通じて小学校に臨時の体育の先生として赴いたり、自治体主催のパラスポーツイベントに参加したりする機会は年に数回あるといいます。こうした場では、会社名の入ったウェアを着用し、企業名を紹介する場面も生まれています

体験会では、パラパワーリフティング専用のベンチ台を使い、実際にバーベルを持ち上げる機会を提供。「運動が得意ではない子どもが重いバーベルを上げられたとき、目の輝きが変わります」と成毛さんは話します。こうした場で子どもたちと接する意義について、「その子たちの将来が楽しく明るいものになるよう、何か一つでも力になりたい」という思いがあると語ります。

また、積極的に社外活動を実施することについては、成毛さん自身にも明確な意図があります。「入社する前は、APRESIA Systemsのことをまったく知りませんでした」と振り返る成毛さん。しかし、実際に入ってみると、サポート体制は他社に劣らない、むしろ素晴らしい環境だと実感したそうです。アスリート雇用を希望する若い選手たちは、どうしても知名度のある企業に魅力を感じがちですが、成毛さんは自身の経験を踏まえ、自信を持ってAPRESIA Systemsをお勧めしたいと感じています。 「自分よりも結果を残し、メディアでも注目される選手が採用されれば、会社の知名度も上がるはず。そこをうまく伝えていきたい」と成毛さんは意気込みます。

成毛さんらパラアスリートの活躍は、APRESIA Systemsの顧客にも知られるようになっており、「『御社はこんなスポーツ活動をしているのですね』などと話題にしてくれることがあります。本業とは違うところで喜ばれる、自慢できる話題があるというのは、社員にとってもテンションが上がる出来事のようです」と木村さんは喜びます。アスリートの活躍が業績へ直接つながっているかは定量化しにくいものの、社員のモチベーションや会社への誇りという点で、確かな手応えを感じているといいます。

木村さんと成毛さん

選手としての、これからの目標

目下、成毛さんは国際大会への出場を目指して日夜トレーニングに励んでいます。アジア圏は世界の上位ランキングの選手が多い激戦区であり、推薦枠を視野に入れた厳しい挑戦が続いています。直近の主要国際大会の選考からは外れてしまったものの、競技を続ける意志は変わりません。「ここまで来たし、まだ伸びている実感がある」と、その先の世界選手権などへの参加も目指しています。

年齢を重ねながら競技を続けることについて、成毛さんは前向きな姿勢を見せます。パラパワーリフティングには45歳以上を対象とした「レジェンド」部門があり、最軽量級である41kg級での金メダルを狙いたいといいます。

厳しい体重管理を続けながらも結果を残していきたい、これからも上を目指して成長していきたい。内に秘めた情熱を、成毛さんは静かに語ってくれました。

中島梨栄選手

※当日取材に参加できなかった中島 梨栄選手(デフゴルフ)の写真とともに

APRESIA Systems株式会社
担当部署 HR本部 総務部
住所 〒104-0045 東京都中央区築地二丁目3番4号 メトロシティ築地新富町 8階
URL https://www.apresiasystems.co.jp/
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